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気ままにその日暮らし

【マリー・セクストン】 ロング・ゲイン ~君へと続く道~

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このかけがえのない友は、残酷な恋。

 久しぶりにボリュームがある、内容も読み応えのある作品に出逢った。
 最初に感じた印象はそれでした。
 恋愛とは別のところを主体にした作品は作品で面白味があって良いのですが、メインに恋愛を据えそれこそをガッツリ濃厚に読ませてくれるBL(M/M小説だけど)もたまに読むとしみじみと同性同士ならではの切なさや甘さに良さを感じます。

 この作品はまさにそれ。
 370ページ弱のボリュームで、二人の出会いからそれぞれの苦悩、職場や家族との折り合い、巻き込まれる事件、そしてその先にある幸福を掴む過程をじっくり読ませてくれる、読み応えバッチリの1冊でした。

 

≫ あらすじ

 コロラドの小さな町コーダで、親の店を継いで働くジャレド。小さな町で、ゲイとして生きるのは簡単ではない。トラブルをおこさないように静かに暮らしながら、自分はこのままひとりで生きていくのだろうと思っていた。マットが目の前に現れるまでは。
 新しく町に越してきた彼は、警官で、ストレートで、そしてジャレドとほとんど一瞬で気が合った。同じ時間を過ごすうち、ジャレドは自分たちが友人としての一線を越えようとしているのを感じる。だがその先に何か望みがあるのだろうか? もしなければ二人は友人のままでいられるのだろうか? そして迎えたジャレドの誕生日、それは運命の夜となった────。

 

≫ 登場人物

ジャレド・トーマス(受)
 家族と共に金物屋を経営しているゲイ。カムアウト済み。さっぱりした性格でゲイゆえの臆病さも持ち合わせているせいか積極性もあるが健気な一面もあり。

マット・リチャーズ(攻)
 ずっとゲイかもしれない自分を否定し受け入れられずに生きてきた警官。父親との折り合いが悪いのも拍車をかけている。こちらも基本的には芯の強い男前な性格。

 

≫ 感想

 シリーズ1作目。

 家族にもカムアウト済みのジャレドと違いマットがなかなかゲイである自分を受け入れられない人物だっただけに、恐る恐るのように何度も近づいてはやっぱりダメだと離れようとするのが読んでてシンドくじれったくはあったけれど、その葛藤と苦悩にとてもリアリティがあって読んでて面白かったしすごく良かったです。
 ジャレド側からすると期待を否が応でも持ってしまうだけに、ただ離れるだけでなく別の女性と付き合いを続けながら中途半端に関係を持とうとするマットにはちょっと嫌悪感を覚えずにはいられなかったものの、読み進めるうちに彼の苦悩も理解できるような気持ちになってしまう絶妙なストーリー展開も秀逸。

 そしてやっとマットがジャレドへの愛情を受け入れてホッとしたと思ったら、周囲の嘲笑や嫌悪に晒されるツラさを知っているぶん、今度はジャレドが臆病さを発揮するのがゲイならではの苦しみ痛みが伝わってきて更に◎。
 マットが腰を据えたと思ったとたんのことなので、正直読んでてオイオイ今度はジャレドかよーとは思ったけど、このあたりのジャレドの苦悩もちゃんと読ませてくれるので読者側にも理解を生み、一筋縄では決していかないことこそがゲイ同士の恋愛の難しさを考えさせられて胸が詰まる思いでした。

 折り合いの悪いマット家とゲイであることを受け止めているジャレド家の対比を描きつつ家族との関係性やゲイを嫌厭される仕事仲間との関係、また、子供たちとの交流を交えてジャレドが家族の中から世間へと出ていくエピソードなど、盛りだくさんながらどれもを上手く盛り込まれて展開されていくストーリーは読み応えがあって満足感が得られ、濡れ場も途中までとはいえ絶妙なリバシーンが見られて大変オイシかったです。
 恋愛模様をガッツリ楽しみたい方にはオススメの1冊!

 

ロング・ゲイン ~君へと続く道~ (モノクローム・ロマンス文庫)

ロング・ゲイン ~君へと続く道~ (モノクローム・ロマンス文庫)